フエフェスティバルと企画ツアーの成功

フエフエステバルと企画ツアーの成功

ベトナム中部の古都フエで隔年開催されるフエフエステバルは、ベトナム観光年の2012年4月、世界5大陸24か国30以上の芸術団体から500人、ベトナム国内20余の地域文化芸術団体を合わせて約1,500人を超す演者が織りなす世界規模の一大文化祭典となった。本友好協会は、協会独自の歌舞団と記念ツアーの組織で参加し、成功を収めた。沖縄一流の伝統文化と紹介、そのための一流の芸術家の組織と、ホームステイの経験が、沖縄からの参加者とベトナムの家庭に与えたそれぞれの教訓はこれまでになく貴重であり、沖縄とベトナムのより緊密な友好親善の実を挙げたといえよう。
第一に、沖縄の古典舞踊の師匠たちが流派を超え自費参加して、県内でも実現できない超一流の夢の協演である。舞踊団は、舞踊家7名、三線・筝・太鼓など奏者5名、古武術演舞者1名の13名から構成され、貫花、四つ竹などと古武術を合わせて10の演目を異なった所作の手合せから始まり、それぞれの楽器、小道具、衣装、被り物などを自らの手で運び、満場の観客に琉球伝統の芸術の香りを届けて魅了した。各芸術家の方々の文字通りのボランテイア的な献身的尽力がなければ成功はなかったといえ、深く感謝する次第である。

以下、第1部 歌舞団への呼びかけ・結成から実演当日、旅行全体を組織した、仲村千恵子理事の旅行メモと写真、第2部 ベトナムの一般民家にホームステイしてカルチュアショックを受けたメンバーの手記と写真から、その沖縄からの「文化使節」を果たした、友好親善の使者たちの活躍ぶりを紹介しよう。

第1部 歌舞団の結成と海外公演

(1)過去2回とは違って、友好協会自前の歌舞団を結成するために、仲村理事はまず過去に海外公演でお世話をした琉球舞踊家の一人ひとりに面会して意義を訴え要請した。一度は断念した今回のフエフエステバルへの参加が、この努力によって、歌舞団の結成、記念企画ツアーの実施につながる
(2)仲井眞知事への表敬訪問・記者会見
4月3日昼前、9名の歌舞団員と友好協会役員5名は、仲井眞弘多沖縄県知事を表敬訪問しフエステバル参加を伝え、知事からはその前にフエ省知事からの招待への鄭重な返書が託された。その後県庁第1記者クラブで、沖縄県民への呼びかけがなされた。席上、宮城律子・琉舞無憂華の会師範から「おきなわの伝統芸能や音楽の薫りを届けて喜んでもらい、交流の小さな種が生まれることを望む」旨の発言がなされた。

 

 

 

 

 

 

2.出発から開会式まで
4月6日朝 普通ならお弟子さんが運ぶであろう大きな楽器、衣装、被り物、小道具などを各自携えて、那覇国際空港を出発、台北―ホーチミンを経て目的地フエに到着したのはもう夜も更けていた。

4月7日 入手困難な開会式チケットはフエ沖縄文化交流センターの手で確保され、午後8時、折からの雨も上がり、フエの王宮を背景にした特設舞台で、華麗で民族色豊かな演舞や王宮上空に打ち上げ花火でフエステバルの開会を祝った。

3.現地中学生、大学生らとの文化交流会、表彰式
朝9時から、フエ師範短期大学での交流会には、グエン・チー・フオン中学ら3中学から90名、フエ外国語大学・フエ師範短期大学生ら160名、またフエ各国友好協会連合会会長、フエ越日友好協会会長、校長ら来賓が会場を埋めるなか、沖縄の歌舞団が舞踊や空手演武を披露、また、現地中学、大学生らもそれぞれ演技をし、フエ側、沖縄側からの
友好連帯の挨拶もあり、友好の輪を広がった。

4.その後、市内ホテルでは、各国代表へのフエ省招待の感謝パーテイが開かれ、それぞれに、フエ省からの感謝認定証が授与された。このオールカラーの美しい賞状は、後にカラーコピーされ、公演記念として沖縄歌舞団の全員に授与された。
沖縄代表も舞踊を披露し、カチャーシーには各国代表も加わり、友好の雰囲気が盛り上がった。また、席上、フエ省知事宛ての沖縄県知事からの親書も手交された。

5.フエステバルでの公演当日
4月8日夕刻 フエ王宮内ダイクン門前庭に設置された特設舞台で、沖縄歌舞団総勢13名が、四つ竹や貫花、空手実技など10の演目を披露した。会場客席を埋める約200名の世界中から集まった観客を魅了した。当初はダイクン門内での公演の計画であった。
一流の琉球舞踊の質の高さはいうまでもないが、地方(じかた)を務めた唄三線、筝、太鼓らの活躍も特筆されるべきであり、わずか数名のリズムとハーモニーで琉球文化の世界を創造する技は見事で、地元テレビ局も取材していた。

また、髪結い(ウチーカンプー)の技術をもったメンバーが全部の演目の準備を成し遂げたし、化粧や着付けも自前で仕上げた。このような少ないメンバーでのやり繰りの尽力が華麗な舞台を支えたと言えよう。
しかし、本来なら1人当たり相当の時間がかかるであろう、髪結い、化粧、着付け、早変わりなどの、幕間を地方の演奏で繋いだが、その空白にかなりの観客が席を立った。限られた費用での海外公演ということでやむを得ないところもあったが、素晴らしい演技であっただけに残念であった。

 

8.帰国、解団式、感謝パーテイ
帰国後しばらくして、4月26日、沖縄市のベトナム料理店シンチャオで、歌舞団への友好協会主催の感謝パーテイが開催され、歌舞団のメンバー一人ひとりに友好協会からの感謝状と写真アルバムが授与され、前述フエ省からの美しい認定証が伝達された。

(注)文中一部、鎌田 隆「沖越文化交流に実り」『琉球新報』2012年4月29日号から転載
以下、第二部は次回掲載