ベトナム・ナウ!!―夏のベトナム訪問記

ベトナム・ナウ!!―夏のベトナム訪問記
その4.ドンアイン沖縄文化経済交流センター

1. 沿革・概要
ハノイの市街地から17km、ノイバイ空港からは9km、高速道路を下りて300mも農道を行くと、今ちょうど稲の穂波が美しい水田地帯の向こうにドワセンはある。登下校時には若者たちがその農道をバイクや自転車で一斉に集いまた散って行く。
DOWACEN、正確には、Trung Tam Giao Luu Kinh Te Van Hoa Dong Anh-OKINWA(ドンアイン沖縄文化経済交流センター、以下、ドワセンと呼ぶ)は、1997年、沖縄・ベトナム友好協会、(株)沖縄ベトナム交流会とハノイ市越日友好協会ドンアイン支部によって設立された、日本語教育と奨学金事業、旅行事業などを行うNPO法人で、ハノイ市教育訓練局が所轄する。満10年の現在、財政状況は安定し、施設設備の整備強化の外、2008年度には第2タンロン工業団地付近にDOWACENNⅡを開校した。
事業内容は、設立目的の第一である日本語教育で、ドンアイン地区と近隣の青少年への日本語教育の累積が5,200人以上であり、2008年度には、月水金の夜間には基礎から中級コースまでの日本語教室で累計250人が受講した。また、ハノイ市近郊のタンロン・ノイバイ両工業団地内の日系企業従業員への日本語教育では2000年以来の実績は28社約30,000人以上、その他企業のルールや、方針、日本の文化を含む教育を実施している。2008年度にはタンロン工業団地の日系企業15社、ノイバイ工業団地の日系企業約6,000人への教育を行った。また、第二に、日本からの視察団、投資調査、国際会議、文化交流、観光各団体の送迎や日越両国の相互理解と友好交流で、       2008年度にはベトナムと沖縄の陶器会社の輸出手続きなどの交渉・事務代行などの事業を手掛けた。第三に、熱帯果樹等の導入と技術提携・交流を行うことで両国の農業発展に寄与する。第四に貧困・枯葉剤被害・烈士の各家庭の子弟および障害児へのDOWACEN奨学金の授与で、2008年度には奨学金受給者は23人、合計710万ベトナム・ドンを高校・中学・小学校4校に給付している、などである。

日本語教育には一般コースおよび法人コース、その他企業などのニーズに応じて開講するため、年間を通した授業ではなく期間によって濃淡がある。学生数は時期によって変動するが、私の訪れた期間は400名ほどが授業を受けていた。『みんなの日本語』『新日本語の基礎』その他日本人の日常生活についての視聴覚教材も利用している。私が実際に教室で見たテキストはかなり専門領域の内容を日本語で記述したものであった。
学び舎は、後方に池を配する亜熱帯の緑の多い落ち着いた環境で、敷地約9,394㎡(うち使用は約5,000㎡)に煉瓦作りの平屋建て(一部2階)で20人収容の19の教室、事務所棟、宿泊棟、守衛室などが配置されている。教員は全部で30人(うち男性8、女性22人)、事務を担当する職員は13人(うち日本人女性スタッフ 1人、ベトナム人スタッフ7人で男性1人、女性6人)、その他、食堂1、守衛3、運転手1の総勢49名で沖縄にいる与儀所長の代行を務めるDong Thi Thu Ha女史とチーフアシスタントで沖縄出身の大木ひとみさんを中心に「女性優位」?で家族的雰囲気の人間関係の暖かな職場である。

HappyRanchi Dowacenスタッフとの楽しい昼食を共に

同じく沖縄・ベトナム友好協会が設立した、フエ沖縄文化経済交流センターとは違い、優秀なカウンターパートに恵まれて今や自立・自律して発展する段階にある。与儀所長はじめ沖縄側の努力と相手側の自助的頑張りが相俟っていまここに結実した訳である。

ドワセンでは近年、書類選考や面接試験など日本の一般企業採用基準に基づいた人材の選定を行っている。また、英語のベトナム語翻訳・通訳、在越日本人へのベトナム語・英語教育など語学教育のバラエテイが豊かになってきているのも最近の変化である。
世界金融危機の影響による工業団地の生産縮小・従業員削減による日本語教育受講生減少のなかで、今後、タンロン、ノイバイ両工業団地の日系企業との連携強化、クアンミン工業団地の開拓、夜間クラスの充実、教育施設の拡充、教員の採用、他外国語教育への拡大、DOWACENNⅡの増強、カリキュラムの改編による教育の質の向上など日本語教育面の外、旅行業務、商務・文化交流、社会事業でも実績を基礎に大きな展望をもっている。

2. ドワセンを窓口とする『健康食品』技術移転計画

沖縄・ベトナム友好協会は、去る5月トヨタ財団『2009年度アジアの隣人プログラム』に応募して、「ハノイ近郊の農村における健康食品の生産・製造・流通に関する経営指導(技術移転)」に関する企画書をトヨタ財団に提出した。これは、ベトナムの経済発展の結果としての食生活の向上欧米化に伴い、近年では生活習慣病の増加が問題化して将来的には深刻化することが予測される。そのようなベトナムにおけるニーザに早期に対応し、ベトナム国民の健康生活の増進に寄与する。また、現地窓口になるハノイ・ドンアイン地区の農業・製造業の発展による地域経済発展に貢献し、雇用効果・諸波及効果を惹起し、また低賃金コストによる利点を活かした輸出商品として外貨を獲得し、かつ原材料の沖縄への逆輸入により沖縄企業にとってのメリットも期待されるのである。この企画には、技術面で沖縄における斯界のトップ企業である沖縄長生薬草本社の先進的経験に基づく技術をベトナムに技術移転するために、その企画の当初から同社の積極的支援を得ている。ドワセンを現地窓口とし、地域農業公社・地域農民をカウンターパートとする事業である。

\n7月段階のハノイ市越日友好協会、ドンアイン地区人民委員会への打診では、全面的賛意と協力による受け入れの感触を得ている。本事業は、トヨタ財団の補助申請の可否如何にかかわらずドワセンの設立目的の一つであった農業技術の交流・提携・導入などに合致する事業として、今後展開されるであろう。